ブラックホールの種類・分類 ~質量と性質~

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およそ100年前、アインシュタインの一般相対性理論により存在が予測され、ついに直接観測に成功し2019年に初めて画像が公開されたブラックホール。まだまだ謎の多いこの暗黒の天体の正体を解明しようと、世界中で研究が進められています。今回は、現在ブラックホールがどのように分類されているか、について取り上げてみます。

質量による分類

ブラックホールは質量によって主に3つに分類されています。

  • 恒星質量ブラックホール(太陽の数倍~数十倍)
  • 中間質量ブラックホール(太陽の数百倍~数十万倍)
  • 超大質量ブラックホール(太陽の数百万倍~数十億倍)

ある恒星の質量が太陽の約20倍以上あると、一生の最後に超新星爆発を起こし、中心に恒星質量ブラックホールが残ります。また、太陽の約8~20倍の質量の恒星は最後に超新星爆発を起こした後、中性子星が残りますが、その中性子星も太陽質量の3倍を超えると重量崩壊しブラックホールになると考えられています。「はくちょう座X-1」は恒星質量ブラックホールで、恒星と互いの周りを回っている連星であり強いX線を放射しています。周囲に物質がなくブラックホール単独だと、降着円盤ができずX線が放射されないため観測が困難で、これまで見つかっている恒星質量ブラックホールはほぼ全てX線を放射する連星系です。恒星質量ブラックホールは銀河内に多数散在していると考えられています。

超大質量ブラックホールはほとんどの銀河の中心に存在していると考えられ、EHTにより最初に画像が公開されたM87楕円銀河の中心のブラックホール「M87*」は太陽質量の約65億倍もあり、次に公開された我々の天の川銀河中心のブラックホール「いて座A*」も400万倍と大質量です。しかし、超大質量ブラックホールができるメカニズムは未だわかっておらず、ブラックホールが合体を繰り返してできる説や、初期宇宙で重力により一気に大量の物質が集まり生まれた説などがあります。ちなみに、太陽質量約10億倍以上のブラックホールの事象の地平面は、その直径が太陽系よりも大きくなるそうです。

中間質量ブラックホールについては、超大質量ブラックホールが合体でできているならばそれなりに見つかっていそうなものですが、恒星質量ブラックホールに比べてほとんど見つかっていません。しかし近年、重力波検出器LIGOなどが太陽質量数十倍程度のブラックホール同士が近づき合体した際の重力波を観測し、これにより太陽質量100~200倍程度の中間的とも言えるブラックホールができたとされています。中間質量ブラックホールは恒星との連星系や降着円盤を作りにくく電磁波による観測が難しいのか、はたまた何らかの理由により一気に合体して大質量になるためほとんど見つからないのかわかりませんが、第3の目、重力波によって今後多く発見されるかもしれません。

性質による分類

ブラックホールの性質を決める要素は「質量」「回転(角運動量)」「電荷」の3つしかありません。このうち質量はどのブラックホールも0ではないため、回転と電荷の有無によって4つのタイプに分類されます。

他の天体に比べてこのブラックホールの特徴の少なさから、ジョン・ホイーラーが「Black hole has no hair」と述べたことから「無毛定理」と呼ばれています。ただでさえ暗黒の天体なので、一見区別がつきそうもないですからね。

  1. 事象の地平面:脱出速度が光速と等しくなる球状の境界。事象の地平面から先は全てが飲み込まれるため、実質的に地平面までがブラックホールの大きさとされることも多い。中心から地平面までの距離をシュバルツシルト半径という。
  2. 特異点:ブラックホールの全質量が集中していると考えられる領域。一般相対性理論の計算では大きさ0、密度∞となってしまい理論が破綻する。それを回避するため、超ひも理論などの研究が進められている。
  3. エルゴ領域:ブラックホールの回転により空間が引きずられ、その運動速度が光速を超える領域。この領域ではどれほど抵抗してもブラックホールに対して静止していることができず、回転方向に引きずられる。ただしエルゴ領域内であれば、外側に向かって運動すれば脱出可能。

「シュバルツシルト・ブラックホール」は回転も電荷もない最も単純なブラックホールで、シュバルツシルトが計算を単純化するために想定したと言われています。しかし、現実的にあらゆる天体は自転しているはずなので、天体の重力崩壊で生まれたブラックホールも自転しているはずです。

「カー・ブラックホール」は自転しています。自転速度が大きくなると、シュバルツシルト半径が小さくなります。事象の地平面は内側と外側に2つあり、内側の内部地平面に入った物質はエネルギーが無限大になると考えられています。外部地平面の外側にはエルゴ領域ができます。また、回転による遠心力で特異点はリング状になります。

リング状特異点について

シュバルツシルト・ブラックホールでは事象の地平面の内側へ入った物質は必ず特異点へ向かいますが、カー・ブラックホールのようにリング状の特異点であれば、ぶつからずに中央を通過できる可能性があります。特異点のリングを通り抜けると、ブラックホールに吸い込まれる事象と反対の事象が起きて、我々とは別の宇宙に吐き出されるかもしれないと言われています。このブラックホールと反対に吐き出す仮想天体をホワイトホールと呼びます。

電荷をもつブラックホールとして「ライスナー=ノルドシュトロム・ブラックホール」や、自転もしている「カー=ニューマン・ブラックホール」があります。しかし、電荷をもつためには電荷をもった星を重力崩壊させる必要があり、ブラックホールに変わる前に電荷の反発で跳ね返されるため、現実的には生まれにくいと考えられています。

以上の事から、宇宙で最も一般的なブラックホールは「カー・ブラックホール」であると考えられています。

まとめ

・質量による分類

  1. 恒星質量ブラックホール(太陽の数倍~数十倍)
  2. 中間質量ブラックホール(太陽の数百倍~数十万倍)
  3. 超大質量ブラックホール(太陽の数百万倍~数十億倍)

・性質による分類

  1. シュバルツシルト・ブラックホール(回転なし 電荷なし)
  2. カー・ブラックホール(回転あり 電荷なし)
  3. ライスナー=ノルドシュトロム・ブラックホール(回転なし 電荷あり)
  4. カー=ニューマン・ブラックホール(回転あり 電荷あり)

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